午後六時、一行は馬路村に到着した。


 宿泊所は安田川に面した馬路温泉の施設内のログハウスだった。

 中村ら地元の数人が出迎える。


「初めまして中村です。だい、この度は馬路村に来てもらいましてありがとうございます。今日はお疲れでしょうから温泉でもつかってゆっくりしちょって下さい。明日は河原でお客用意しちょりますきに」

 中村は高瀬慎也名人を前に少し緊張していた。


「お客って?」

 そう言って隆人が首をかしげるとすかさず久米が答えた。


「高知では宴会の事をお客というんです」

「へー、お客ねえ。てっきり久米さんがタコ焼きかなんかの出店でも出すんかと思うたわ」

 と隆人が言うと周囲から一斉に笑いが上がった。


「夕食は部屋に運びましょうか。それとも食堂で食べられますか?」

 中村の横の青年が紅潮した顔で尋ねると、隆人が慎也の顔を伺った。


「食堂の方で食べましょう」

 慎也はポツリと呟くとまた川の方に目を移した。


「本当に綺麗な川でしょう」

 と久米も暮れなずむ川面に目を移す。


「とにかく飯や飯。飯にしようで。腹減ってかなわんわ

 隆人は荷物を持つとログハウスの方に歩き始めた。


 食堂に行くと数組の宿泊客が夕食をとっていた。


 その一角に中村ら数人が座ってい

 中村は一行が座ると直ぐにビールを頼んだ。


「舞ちゃん、ビール10本ばぁ持って来てや」

 中村の声に暖簾の向こうからハーイと言う若い女の声が聞こえた。

 カートでビールが運ばれてくる。


 メニューを見ながら歓談する皆の前に次々とビールが置かれていった。


 と、何気なくウェイトレスを見上げた慎也の顔色が一瞬で変わるのを対座していた隆人が気がついた。

 隆人も振り返ってウエイトレスに視線を移した瞬間、思わず目をむいて「あっ」と声を上げてしまった

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