隆人は、母と祖母が話していたことを思い出した。

 大阪から囮鮎を買いに来た常連客の中の誰か


 やはり慎也の父は鮎釣りをしている人なのだ。

 だが、有名になったらわかるとはどういう意味なのか。


 隆人が疑問に思うと慎也が続けた。

「俺はその時お母ちゃんの言ってる意味がわからなかったけど、後から考えたらつまり俺が親父に似ているってことじゃないのかと思うんだ。しかも俺の親父は鮎釣りをしている人なら誰もが知っている名の知れた人ではないのかと」

 名の知れた人。隆人は息を飲んだ。


「慎也きっとそうに違いない。お前には天性の素質があるからな

 隆人はハンドルを切りながら早口で言った。


 確かに慎也の鮎釣りは持って生まれた天才的なところがあった。

 自分など常人とは一線を画した天性の素質が備わっている。

 慎也が鮎釣り名人の子であっても不思議はない。


「とにかく俺は鮎釣りで名を上げたいんや。そしたら自分のなにもかもがわかるような気がするんや」

 慎也は絞り出すような声で言った。


「お前ならなれる。お前ならやれるわ。絶対間違いなく全国一の鮎釣り師になれるって」

 隆人は雑誌で見た名人の顔を次々思い出してみた。


 だが、高瀬に似ていると思しき名人は思い浮かばなかった

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