まいどー! 有田川ダム上の柴崎おとり店です(^^)/

和歌山県有田川ダム上にある柴崎おとり店のサイトです。 鮎釣りの遊漁券とオトリ鮎を販売しております。 鮎釣りの皆さんお気軽にお越しください(*‘ω‘ *) 柴崎おとり店 〒643-0601 和歌山県有田川町押手770-2 ☎073-726-0413

    有田川ダム上の水況などetc.


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    2020年10月

    「夜遅うにすまんがです。あたし清岡舞の叔母の南清子いうがです」

    「は、はあ。何か?」


    「言うか言うまいか悩んでるうちにこんな時間になりまして。杉原さんだけに相談があるがです」

    「ええ、何でしょうか?」

     隆人は何度も首を傾げた。

     清子は昨夜舞から聞いた一部始終を隆人に話をした。


    「そ、それほんまですか。まだ、馬路に来て二日目やのに、信じられんわ」

     隆人は大声を出して驚いた。


    「ほんまながです。あたしも舞からその話を聞いて驚いたがです。きっと高瀬さんは、舞のことをその鈴木雅やとかいう人やと思いこんじゅうがやと思いますきに。舞は鈴木雅やいう人とは全くの別人ながです。ただの他人のそら似ながです」

    「あ、あいつ、まさか・・・・・・」


    「とにかく、舞は高瀬さんが勝ったら和歌山に行く言うがです。それを高瀬さんも望んでいるはずだと舞は言い張るがです。けんどなんぼいうたち舞はその鈴木雅いう人とは別人やし、そんな二人が一緒になって幸せになれるわけなんかないがですきに。あたしはこの村で舞を純太と結婚させちゃりたいがです。純太も舞のことを好きながです。あたしは舞に幸せになってほしいがです。杉原さん頼みますきになんとかしてください

     清子は半泣きだ。


    慎也が舞を和歌山に連れて帰えるってぇ

     杉原は眉間に皺を寄せて腕組みした。


    「杉原さん、卑怯かもしれんけど明日の試合でなんとか高瀬さんを負けさせる方法は無いがでしょうか。姪の一生がかかっちゅうがですきに頼みます」

    「・・・・・・・・」

     詰め寄って懇願する清子を前に隆人は返答に窮した。


     宿に戻ってからも隆人はなかなか寝付けない。


     慎也が部屋に戻ってきたのは十時過ぎのことだった

     隆人はどうしていいのか分からず寝たふりをした。

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     翌日、馬路は昼まで激しい雷雨だった。


    「こりゃようけ川の水が出た。明日の試合は無理やな」

     隆人は慎也に言い聞かせるように増水した川を見た。


    「この川はダムがないので水の出るのも早いけど引くのも早いらしいですよ」

     久米が原稿を書く手を止めて川を覗き込みながら言った


    「お前、商業主義に走っとんちがうやろなぁ。明日の試合のことなんか絶対書くなよ」

    「と、とんでもないです

     隆人が凄むと、久米は慌てて座り直した。

     慎也は窓を開けて川をじっと見つめている。


    「なぁ慎也、考え直せよ。昨夜は酒に酔っていて少し冗談が過ぎたと言えば今からでも何とかなるないか。だいたいお前にとって何のメリットも無い試合やで。まぁお前が負けることは考えられんけどな。何事にも万が一ってことがある。万が一負けでもしてみろや。鮎釣りの神様高瀬慎也の名が落ちるだけやない。お前はメーカーの看板やこれからの仕事にも影響するかもしれへんのやで」

     慎也は川を見たまま口元を緩めた。


     一匹でも鮎を多く釣り上げる腕達者なプロに消費者の心は動き時めく。

     そのプロが使う鮎竿やヒキブネ、あるいは仕掛けなどは飛ぶように売れるのである。


     そのプロが片田舎の名も知れぬ一介の釣り人に負けたとあっては、製品への売れ行きに影響が及ぶことは必至だ。

     万が一そんなことでもあったら大変なことになる、と隆人は口を歪めて暢気に構える慎也を横目で見た。


     晩の七時過ぎに隆人に清子から電話があった。


     清子は河原の宴の時横にいた者ですと言うが、隆人ははっきりとは思い出せない。

     清子は今から相談があるので会ってほしいと言う。


     慎也もか、と訊くと隆人だけでいいという。


     何の相談かと訊いても、清子はとにかく会ってから話すとだけしか言わない。


     ちょうど慎也は風呂に行ったきり帰ってこない。


     しかたなく隆人は清子のせっぱ詰まった様子に引っ張り出されるように、役場へと続く吊り橋のたもとへと出向いた。


     吊り橋の向こう側に中年の女性がエプロン姿のまま一人で夜間灯の下に立ってい

     隆人の姿に気が付くと女性は腰を折って一礼をした。

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