一昨日の晩、飲みに行ってて外人の女性二人とすれ違った。外人の女性と言ってもゆうに70は過ぎたお年寄りだ。
 外人は年寄りの女性でも背が高いなーと思ってたら「ヘ~イ」と呼び止められた。

「な、なんでしょうか」と振り向いたら「ヘイ、キャユースピークイングリッ」と言う。わたしはとっさに「え、いやぁ ジャ、ジャパニーズ オッケー ノ~イングリッシュ」と返した。

「オー」と両手を広げて見下ろす外人女性たち。目を丸めて今度は「オ~サケェ」を連発する。
「オ~サケェ?」むっ大阪かな。
と、やな思い出がフラッシュバックした。実は過去に「オ~サケェ」のトラウマがある。

 20年前ぐらいのことだが、友人らとお酒を飲んで終電に間に合わずホテルに泊まった。翌朝、自宅に帰ろうと阪神電車に乗ったら隣の若い外人女性に話しかけられた。

「なんじゃらかんじゃらオ~サケェ」と言っている。
てっきり「あんたお酒くさいよ」と言われたと思い「イエスタディ、トゥディ、オ~サケ」と身振り手振りで言い返した。

 そしたら首を激しく横に振りながら「ノーッ」と両手を広げる。 
 わたしは受けたと思いほんとに酒臭い息を吐いて自分の鼻をつかんだ。

 そんなことをしていると近くのおっさんが寄ってきた。
 そのおっさんは笑顔でわたしたちのやり取りに絡み、流ちょうな英語で話かけた。

 大きくかぶりを振って納得するような外国人女性。
 どうやら「オ~サケェ」は「大阪」のことだったようだ。「この電車は大阪に行きますか?」とわたしに訊いたらしい。
 わたしは乗客から笑われ赤っ恥をかいたことに気が付き赤面した。

 このお年寄りらもまた、大阪のことだなと思った。ら、二人そろってグラスをあおるゼスチャーだ。今度こそ間違いなく酒だ。これで大阪だったらコケルゼと、わたしも同じゼスチャーで「オ・サ・ケ」ね、と返した。「オーイェスイェス」と二人が笑う。

 わたしは目の前にあった「がんこ寿司」の看板をさして「ヘィ、ガンコガンコ。オサケ ガンコにアリィマース」と言った。
「オーノー、オンリーオンリー」と外人さん。
「え、オンリー。オー だけ ネェ だけ」とわたし。
「ダケェ? ノーノー、オンリーオンリー」と外人さん首をかしげる。

 もぉわけわからんわと、あきらめたわたしが両手を広げ「ヤッパ ワカリマシェ~ン」とカタコトで言うと「オー、ガール オー、バイバイ センキュー ねー」って、おいちょちょちょっと、最後確かに「ねー」って言ったぞ! 

 それに二人ともほろ酔いみたいだったし。なんか、ただ遊びいじられただけ、みたいな感じだったよなシラー

 と、ガンコ寿司の鉢巻きおやじを見たらキュッと結んだ口元がかすかに笑っているように見えた。
 わたしはオーノ~と小さくひとり言を言って、またにぎわいの中をふらふらと歩いた。